筋トレというと、一般的にはダンベルなどを使って筋肉に負荷をかける運動をイメージしやすいと思います。
これは、身体を動かして行う動的なトレーニングです。
これに対して、身体を動かさないで行う筋トレの方法をアイソメトリックトレーニングと言います。
アイソメトリックとは等尺性収縮とも呼ばれますが、こうした静的なトレーニングによる筋肥大の効果は、果たしてどの程度まで見込めるのか?
そこで今回はアイソメトリックトレーニングの方法や、その効果について解説したいと思います。
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【目次】
(1)アイソメトリック(等尺性収縮)とは?
- アイソメトリックトレーニングの原理
- 3つの特徴
(2)アイソメトリックトレーニングの方法
- 基本種目
- その他の応用種目
- アイソメトリックトレーニングの留意点
(3)アイソメトリックトレーニングと筋肥大の効果
- 3種類の筋活動
- アイソメトリックにおける強度の指標
- アイソメトリックで筋肥大の効果を高める方法
まとめ
(1)アイソメトリック(等尺性収縮)とは?
アイソメトリックトレーニングの原理
まず初めに、アイソメトリックトレーニングとは何かについて解説しておきましょう。
簡単に言うと、アイソメトリックトレーニングとは筋肉に力を入れた一定の状態をキープして行う筋トレの方法です。
例えば、あなたが動かない壁を力一杯に押しているとしましょう。
その場合、動作は静止した状態に見えますが、あなたの腕や足腰の筋肉は大きな力を発揮している筈です。
そして、ダンベル運動のように筋肉が伸びたり縮んだりする訳ではありません。
つまり、筋肉は長さを変えずに力を発揮している事から、この状態を等尺性収縮(アイソメトリック)と言います。
この原理を筋トレに応用したのがアイソメトリックトレーニングという訳です。
ちなみに、1970年代のカンフー映画で活躍したあのブルースリーも、このアイソメトリックトレーニングを積極的に取り入れていたと言われています。
3つの特徴
筋トレというと、一般的には動きを伴う動的トレーニングが主流です。
一方で、アイソメトリックトレーニングは身体の動きを止めて行う静的トレーニングですから、一般的な筋トレとは大きく異なります。
こうした、筋肉の等尺性収縮によるトレーニングの特徴は、大まかに言うと次の3つです。
・器具を使わずに、何時でも、どこでも、短時間で簡単に出来る。
・身体が静止しているので、動的トレーニングに比べると関節への負担が軽い。
・自分の筋力に応じた筋トレなので、安全性が高く怪我をしにくい。
このように、アイソメトリックトレーニングというのは、極めて手軽に筋肥大の効果が得られる筋トレの方法なのです。
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(2)アイソメトリックトレーニングの方法
基本種目
では、基本的なアイソメトリックトレーニングの方法について解説していきましょう。
「腕のアイソメトリックトレーニング」
1つ目は、上腕二頭筋(力コブ)と上腕三頭筋(二の腕)の筋肉を効果的に筋肥大させるアイソメトリックトレーニングです。
①:軽く腕を曲げて、左右の手首を組みます。
②:互いの手首を押し合うと、下の腕は上腕二頭筋、上の腕は上腕三頭筋が等尺性収縮を起こします。
③:この動作を、左右の腕の上下を入れ替えて行います。
「胸のアイソメトリックトレーニング」
2つ目は、大胸筋(胸の筋肉)を効果的に筋肥大させるアイソメトリックトレーニングです。
①:胸の前で、左右の掌を合わせます。
②:胸を張り互いの掌を押し合うと、大胸筋が等尺性収縮を起こします。
「背中のアイソメトリックトレーニング」
3つ目は、広背筋(背中の筋肉)を効果的に筋肥大させるアイソメトリックトレーニングです。
①:指でカギを作り、お腹の前で左右の手を組みます。
②:胸を張り、左右の肩甲骨を寄せ合うイメージで互いの手を引き合うと、広背筋が等尺性収縮を起こします。
「お腹のアイソメトリックトレーニング」
4つ目は、腹直筋(お腹の筋肉)を効果的に筋肥大させるアイソメトリックトレーニングです。
①:椅子に腰掛けて脚を大きく開き、手を膝の上に乗せます。
②:上体を前傾させながら手で膝を押すと、腹直筋が等尺性収縮を起こします。
「脚のアイソメトリックトレーニング」
5つ目は、大腿四頭筋(太股の筋肉)とハムストリング(太股の裏側の筋肉)を効果的に筋肥大させるアイソメトリックトレーニングです。
①:椅子に腰掛けて、左右の足首を組みます。
②:互いの足首を押し合うと、下の脚は大腿四頭筋、上の脚はハムストリングが等尺性収縮を起こします。
③:この動作を、左右の脚の上下を入れ替えて行います。
以上が、アイソメトリックトレーニングで全身の筋肉を鍛える基本的な種目です。
その他の応用種目
一般的に、アイソメトリックトレーニングは動作が単調で飽きやすいと思われがちです。
確かに、先ほどご紹介したような基本的な種目に限って言えばそうかもしれません。
しかし、アイソメトリックは筋肉に力を入れた状態をキープすれば良い訳ですから、工夫をすれば種目はいくらでもアレンジができます。
そこで、全身のあらゆる部位を重ね合わせてポーズを作り、大小の様々な筋肉を使って等尺性収縮を起こしてみましょう。
また、壁を押す、タオルを使うなどの方法を取り入れると、更に種目を増やす事ができます。
あるいは、誰かとペアになって身体を組み合わせ、互いに押し合ったり引き合ったりするという方法もあります。
アイソメトリックトレーニングの留意点
アイソメトリックトレーニングで注意しなければならないのは、血圧が上がりやすいという点です。
等尺性収縮とは常に力んでいる状態ですから、あまり長く行うと心臓や血管に負担がかかります。
目安としては、持てる力をしっかりと発揮する事ができれば、わずか7秒程度でも十分に筋肥大の効果が得られます。
なぜなら、最大筋力を出し切るのは7秒が限界であると生理解剖学的にも言われているからです。
ですから、アイソメトリックは7秒筋トレなどとも呼ばれ、非常に短い時間で筋肥大の効果が得られるトレーニング方法なのです。
あるいは最大筋力に至らなくても、ある程度の力を入れて行えば10秒程度でも筋肉は十分に刺激されます。
ただし心疾患がある場合は、安全性のためにも強度を軽くして血圧の上昇を最小限に止めておく必要があるでしょう。
頻度やセット数については様々な考え方がありますが、筋肉へ適度な刺激さえ伝われば1日1回でも十分に効果はあると思います。
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(3)アイソメトリックトレーニングと筋肥大の効果
ここまでの話で、こんな疑問を抱いた方もいるかもしれません。
「アイソメトリックトレーニングだけで、筋肥大の効果はどの程度まで得られるのか?」
結論から先に言うと、ダンベルやバーベルを使った動的なウエイトトレーニングに比べれば、筋肥大の効果は小さいという事になります。
では、その理由について解説していきましょう。
3種類の筋活動
筋肥大を起こすには、筋肉に強い刺激を加えなければなりません。
その刺激の加え方には大きく次の3つがあります。
そこで、腕の力を使ってダンベルの上げ下ろしを行う、いわゆるダンベルカールの筋トレをイメージしてみて下さい。
・短縮性収縮(コンセントリック)
まず、ダンベルを持ち上げる場合には上腕二頭筋(力コブ)が盛り上がります。
これは、筋肉が縮みながら力を発揮している状態なので短縮性収縮(コンセントリック)と呼ばれます。
・伸張性収縮(エキセントリック)
そして、ダンベルを下ろす場合には盛り上がっていた上腕二頭筋が元に戻ります。
これは、筋肉が伸びながら力を発揮している状態なので伸張性収縮(エキセントリック)と呼ばれます。
・等尺性収縮(アイソメトリック)
また、ダンベルを最後に1回だけ持ち上げようとした時に、筋力の限界で持ち上がらず動作が止まった場合には、ここまで話してきた等尺性収縮(アイソメトリック)が起こります。
このように、動的なウエイトトレーニングの場合は3種類の筋活動を起こす事ができる訳です。
つまり、等尺性収縮しか起こらないアイソメトリックトレーニングに比べると筋肉への刺激が強く、その分だけ筋肥大を起こす効果も大きいという事になります。
いずれの状態においても、筋肉はゴムが縮むように収縮を起こして力を発揮する訳です。
アイソメトリックにおける強度の指標
ダンベルなどを使ったウエイトトレーニングの場合、扱う重量を増やす事によって筋力アップが見込めます。
つまり、ウエイトの数値というのが筋トレの強度を決める指標となる訳です。
そして、ウエイトが上がらなくなった時が筋力の限界点となり、そこで筋肥大のスイッチが入りやすくなります。
一方、器具を使わないで行うアイソメトリックトレーニングの場合は、その指標となる数値がありません。
ですから、自分が今どれくらいの筋力を発揮しているのかについては、あくまでも感覚的な判断になってしまいます。
そうすると、自分では最大筋力を発揮していると思っていても、実際にはまだ余力が残っている場合もある訳です。
つまりアイソメトリックトレーニングでは、実質的な最大筋力を発揮する事や、段階的に強度を上げていく事が難しいという事になります。
これも、アイソメトリックはウエイトトレーニングに比べると筋肥大が起こりにくい理由の一つです。
アイソメトリックで筋肥大の効果を高める方法
アイソメトリックトレーニングは、それ単独でも筋肥大の効果はある程度まで見込めます。
また、動的な筋トレと組み合わせる事によって、そのトレーニング効果を飛躍的に高める事も可能です。
例えば、ウエイトトレーニングで限界までダンベルを持ち上げ、そのまま数秒間の等尺性収縮を起こすと非常に強烈な刺激が筋肉に加わります。
あるいは自重トレーニングで筋肉を限界まで追い込み、最後に動きを止めて等尺性収縮を起こすという方法もあります。
いずれにしても、動的なトレーニングにアイソメトリックの要素を取り入れると、筋肉への刺激が増して筋肥大の効果が高まる訳です。
この方法は、日頃のウエイトトレーニングがマンネリ化した場合に、刺激を変える目的で行うと効果的です。
まとめ
(1)アイソメトリックトレーニングとは、筋肉に力を入れた一定の状態をキープする静的な筋トレの方法です。
(2)アイソメトリックは等尺性収縮とも呼ばれ、筋肉が長さを変えずに収縮して力を発揮している状態です。
(3)アイソメトリックトレーニングの特徴。
- いつでも、どこでも、短時間で簡単にできる
- 怪我のリスクが低い
- ウエイトトレーニングに比べると、筋肥大の効果は小さい
- 動的な筋トレと組み合わせると、筋肉への刺激が強くなる
いかがでしょうか。アイソメトリックトレーニングは、何かとメリットの多い筋トレの方法です。
ぜひ、あなたのボディメイクに取り入れてみて下さい。
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